英語で「出荷」を表す言葉には「shipment」と「shipping」があります。どちらも頻繁に使われる表現ですが、意味や使い方には微妙な違いがあり、文脈によって使い分けが必要です。
本記事では、両者の違いを「点と線」のイメージで整理し、出荷日 /出荷作業 / 船積み手配 /書類提出などの場面別に、実務で使える英文例を豊富に紹介しています。
英文メールや書類作成で迷ったときに、すぐに使える実践的な内容になっていますのでぜひ参考にしてくださいね。
「shipment」の意味と使い方 – “点”としての出荷表現
基本的な意味は下記の2つです。どちらも点のイメージです (狭義的な意味)。
①:貨物そのもの / 出荷単位
②:出荷行為 / 出荷日(1回の出荷作業またはその実施日)
次のようなコロケーションが使えます(以下は一例):
- arrange the shipment (出荷手配する)
- make the shipment (出荷する(やや事務的))
- carry out the shipment (出荷を行う (ややフォーマル))
- conduct the shipment(出荷業務を遂行する:フォーマル)
「shipping」の意味と使い方 – “線”にも“点”にもなる出荷 / 船積みプロセス
「shipping」は基本的に、出荷から船積みまでの一連の流れ(=線)を指しますが、文脈や構文によっては特定の工程や日付(=点)を意味することもあります。
- 英語では「出荷」も「船積み (航空機への積み込みも含む)」のいずれも shipping という語で表されるため、文脈判断が必要です。
- 「process」や「schedule」などを添えると出荷から船積みまでの一連の流れ (広義(線))で使われる傾向がありますが、実務では船積み工程だけを指す場合もあります。
shipping の基本的な語感 – 線としてのプロセス
「shipping」の基本的な語感(広義)は、出荷から船積みのプロセス全体を指します。
shippingが“点”に変化する条件 – 文脈 / 場所 /日付指定 /動詞
shipping は“線”の語感を持ちつつも、文脈・場所・日付指定・動詞によって“点”として使われることがあります。
狭義で使われる場合、どの工程を指しているかは、文脈や場所(例:factory / port)、日付指定、そして動詞の使い方によって判断されます。
以下のようなコロケーションが使えます(以下は一例):
- arrange the shipping(出荷 /船積みを手配する)
- carry out the shipping(出荷 / 船積みを行う(ややフォーマル))
- conduct the shipping(出荷業務 / 船積み業務を遂行する:フォーマル)
※make は使えないので注意が必要です。
貿易実務で使える例文
貨物 / 出荷単位 (shipment)
- We have many shipments of textiles this week.
今週は繊維製品の出荷が多くなります。
【点のイメージ:出荷単位】
出荷日 / 出荷行為 (shipment)
- The shipment was made last Friday.
先週の金曜日に出荷されました。
【点のイメージ:出荷日】 - We would like to update your shipment schedule. Your order is scheduled to ship this Friday.
出荷スケジュールを更新いたします。今週の金曜日に出荷予定です。
【点のイメージ:出荷日】 - Could you please confirm the shipment date for our October order?
10月の注文分の出荷日をご確認いただけますか?
【点のイメージ:出荷日】
「shipment」単体でも意味は通じますが、dateを加えることで誤解の余地がなくなり、よりフォーマルな印象になります。
出荷スケジュール (shipping)
- We’d appreciate it if you could update the shipping schedule at your factory every week for the upcoming orders.
今後の注文に関して、毎週工場での出荷スケジュールを更新していただければありがたいです。
【点にも線にも解釈可能】
※文脈によって、「点(出荷日一覧)」にも「線(出荷工程全体)」にも解釈可能。 - The shipping process of your order is scheduled to begin next Monday.
御社のご注文の出荷準備から船積みまでの一連の流れが来週の月曜日から始まります。
【線のイメージ:出荷準備〜船積みまでの流れ】
※「process」や「begin」により、工程全体の開始を明示。 - The shipping of your order is scheduled to be on Monday next week.
御社のご注文の出荷日は来週月曜日の予定です。
【点のイメージ:出荷日】
※「on Monday」+be動詞で、出荷日そのものを指す可能性が高い。なお、文脈次第では船積み日を指すこともあり。
出荷書類 (shipping)
- Please provide us with the shipping documents (Invoice, Packing List, etc.)
出荷に必要な出荷書類をお送りください (インボイス、パッキングリスト等)。
【点のイメージ:書類単体】
出荷費用 (shipping)
- Please note that shipping costs have increased due to the rise in fuel prices.
燃料費の上昇により、(様々な)出荷費用が増加しておりますのでご了承ください。
【点にも線”にも解釈可能】
※「shipping cost」の語感は、インコタームズによって柔軟に変化します。
・EXW条件:工場での出荷作業の費用(=“点”)
・CIF条件:工場から港、船便、到着港までの費用(=“線”)
- 費用の文脈では、「shipping cost」が船積み以降の輸送費も含むことがあり、語感が拡張される場合があります。
- 「shipping cost」は文脈によって「送料」と訳すことも可能です。
送料 (shipping)
- Our company will bear the shipping cost for this sample.
当社がサンプルの送料を負担します。
【線のイメージ:送料】
※サンプル発送では、DAPやDDP条件での配送が一般的だと思います。また少量貨物やサンプル品の取引では、クーリエを使うことが多く、個人取引に近い感覚があるため、「shipping cost」は「送料」と訳す方が自然です。
船積み手配 (shipping)
- We are arranging the shipping at Yokohama port for next Monday.
来週月曜日に船積みできるよう、横浜港で手配を進めています。
【点にも線にも解釈可能】
※文脈によって、「船積み工程(線)」にも「船積み作業(点)」にも解釈可能。
「shipping」は文脈によって意味が広く、船積みの一連のプロセス (線) にも船に貨物を積み込む作業そのもの (点) にもなり得ます。特に、積み込み作業そのものを明示したい場合は「vessel loading」を使うと最も明確です。
- Vessel loading is scheduled to begin at 10:00 AM tomorrow.
船積み書類 (shipping)
- Please provide us with the full set of shipping documents (including B/L, Invoice, Packing List, etc.)
B/L(船荷証券)、インボイス、パッキングリスト等を含む、船積書類一式をご提供ください。
※「full set」+「B/L」を明示することで、相手に「船積書類一式」を求めていることが明確に伝わります。
※「the full set of the shipping documents」とした場合、冠詞のtheが二重になることで語調が重くなるため、「the full set of shipping documents」の方が簡潔で自然な語感として好まれます。
【点のイメージ:書類一式】
船積み業務全体 (shipping)
- Our team will oversee the shipping operations, including container booking, export clearance, and vessel coordination
コンテナ手配・輸出通関・船との調整など、船積み業務全体を弊社チームが管理します。
【線のイメージ:業務全体】
まとめ
「shipment」は貨物そのものや出荷日を表す“点”のイメージ。一方で「shipping」は出荷から船積み (航空機への積み込みも含む)までの流れ全体を表す“線”のイメージが基本ですが、文脈によって“点”として使われることもあります。
英語ではこの2つの言葉をうまく使い分けることで、相手に伝わりやすく、誤解のないやり取りができます。この記事で紹介した例文や表現を参考にしながら、少しずつ実務での英語表現に慣れていってもらえたら嬉しいです。