英語で「出荷」を表す言葉には、shipment と shipping の2つがあります。どちらもよく使われる表現ですが、意味やニュアンス、使われる場面には違いがあり、貿易実務では使い分けを意識しないと誤解を招くこともあります。
この記事では、両者の違いを 「点」と「線」 のイメージで整理しながら、出荷日・出荷作業・船積み手配・書類提出など、日々の実務コミュニケーションでよく出てくる場面別に、すぐ使える英文例をご紹介します。
まず一言でいうと:shipment と shipping の違い
- shipment:日常の実務では、「点」のイメージで、
- 貨物
- 出荷単位
- 出荷行為
を表します。
- shipping:基本は「送る」という点だが、貿易実務では
- 船積み行為(点)
- 船積みに関わる工程(短い線)
- 出荷準備〜船積みまでの工程(長い線)
として使われます。
この「点」と「線」のイメージを押さえておくと、英文メールで「どっちを使えばいいんだろう?」という迷いがかなり減ります。
shipment の意味(実務コミュニケーションでの基本)
shipment は「出荷という出来事を数えるための単位(点)」を表す語で、実務では主に次の3つの意味で使われます。
- 貨物そのもの(モノ)
- 出荷の単位(件数)
- 出荷行為(タイミング)
※注意:契約書・L/C では shipment が「船積み」を意味する場合があります
契約書・L/C では shipment が「船積み(積込み完了)」を意味する特有の用法があります。ただし、日々のメールや実務上のやり取りでは shipment は「出荷(点)」を指し、船積み行為は shipping と表現するのが一般的です。
以下は契約書・L/C などの法的文脈での例:
- Latest shipment date=船積期限
- Partial shipment=分割船積み
- Shipment shall be done by…=船積みを完了すること
貨物そのもの(点)
例文:
- The shipment contains electronic components.
その貨物には電子部品が含まれています。
【ポイント】
・shipment=貨物そのもの
出荷の単位(点)
例文:
- We will divide the order into two separate shipments.
ご注文を2件の出荷に分けて手配します。
【ポイント】
・shipment=出荷の単位(件数として数えられる)
出荷行為(点)
例文:
- shipment schedule
どの貨物をいつ出荷するかのスケジュール (出荷日)
【ポイント】
・shipment に schedule が付くことで、 出荷行為の「日付・タイミング」を表す - Your order is ready for shipment.
ご注文品の出荷準備が整いました。
【ポイント】
・ready for shipment → 出荷行為(点)の直前を示す実務表現 - Please arrange the shipment as soon as possible.
出来るだけ早く出荷手配してください (出荷行為)。
【ポイント】
・arrange the shipment → 出荷手配(点)
shipping の意味(基本は点、工程全体は派生的)
shipping の基本的な意味は 「貨物を送ること(点)」 です。辞書でも the act of sending goods と説明されており、まずは「送る」という単位的な動作がコアになります。
しかし、貿易実務では shipping は「送る」という一般的な動作ではなく、主に 港での船積み行為(点) を指す語として使われます。さらに文脈によっては、船積みに関わる工程全体(線)へと意味が広がることがあります。
shipping(点):港での船積み行為
貿易実務で shipping が「点」として使われる場合、工場出荷ではなく “港での船積み行為そのもの” を指すのが一般的です。
これは vessel loading に非常に近い意味ですが、shipping の方が少し広く、積み込み前後の短い動作を含むこともあります。
例文:
- Please arrange the shipping at Tokyo port.
東京港での船積み手配をお願いします。
【ポイント】
・shipping(点)=船積み行為
・vessel loading より少し広いが、ほぼ同じ領域
・工場出荷や船会社への booking は含まない
EC や小口配送では shipping=「出荷」と訳すこともありますが、貿易実務では shipping といえば船積み行為(点)が中心です。
shipping(線):工程全体(文脈で長さが変わる)
shipping に process / schedule / operations が付くと、「送る(点)」という意味が 工程(線) に拡張されます。そして、この “線” の長さは 文脈によって変わる のが特徴です。
shipping は「点」としての船積み行為から、文脈によって「短い線」「長い線」へと広がるため、3つの姿を表で整理すると理解しやすくなります。
| 種類 | 範囲 | 含まれる工程の例 |
|---|---|---|
| shipping(点) | 船積み行為そのもの | vessel loading |
| shipping(短い線) | 港での船積み工程 | 上屋 → バン詰め → VGM → 輸出許可 → CY → 船積 |
| shipping(長い線) | 工場出荷準備〜船積みまで | 工場 → 梱包 → 書類 → booking → 上屋 → CY → 船積み |
短い線:船積みに関わる工程(港中心)
船積みに必要な一連の業務をまとめて shipping と呼ぶケースです。
例:
- 港湾倉庫搬入(上屋)
- バン詰め(FCLバンニング)
- VGM(コンテナ総重量)作成・提出
- 輸出許可
- 保税運送(上屋 → CY)
- CY搬入
- 船積(vessel loading)
- 船積み書類作成(B/L 発行)
例文:
- The shipping operations will take one week.
本案件の船積み業務全体には約1週間かかる予定です。
【ポイント】
・vessel loading を含む
・港での船積み工程のまとまり
長い線:工場出荷準備〜船積みまでの工程全体
shipping がより広い範囲を指す場合、工場での出荷準備から船積みまでの流れ全体を含みます。
例:
- 工場での出荷準備
- 梱包
- 書類作成
- booking
- 工場出荷
- 港湾倉庫搬入(上屋)
- バン詰め(FCLバンニング)
- VGM(コンテナ総重量)作成・提出
- 輸出許可
- 保税運送(上屋 → CY)
- CY搬入
- 船積(vessel loading)
- 船積み書類作成(B/L 発行)
例文:
- The shipping process is scheduled to begin next Monday.
出荷準備から船積みまでの一連の流れが、月曜日に始まります。
【ポイント】
・shipping process=長い線
・文脈によって shipping の線の長さが変わる
shipment と shipping の違い(点と線の整理)
shipment は 「出荷という出来事を数えるための単位」 にひもづく語で、基本的にすべて 点(出来事) の意味です。
shipment(点)
・貨物そのもの
・出荷の単位(1 shipment, 2 shipments…)
・出荷行為(出荷という1回の出来事)
※なお、契約書や L/C の文脈では shipment が「船積み(積込み完了)」を意味する特有の用法がありますが、これは契約英語に限定された意味です。日々のメールや実務上のやり取りでは shipment は「出荷(点)」を指し、船積み行為は shipping と表現するのが一般的です。
一方でshipping の基本は 「送る」という点の意味。しかし貿易実務では、shipping は「送る」という一般的な動作ではなく、文脈によって、港での船積み行為(点)や船積みに関わる工程全体(線)を指す語として使われます。
shipping(点)
・辞書上は「送る」という一般的な動作を指すが、貿易実務ではほとんど使われない
・港での 船積み行為(vessel loading) を指すことが多い
・出来事としての “点”
shipping(短い線)
・港での船積みに必要な工程のまとまり
・booking や通関、CY搬入など
・工場側の工程は含まない
shipping(長い線)
・工場出荷準備〜船積みまでの工程全体
・出荷準備 → 梱包 → 書類 → booking → 上屋 → バン詰め → VGM → 許可 → CY → 船積み
※make the shipping:口語ではまれに聞くが、ビジネス英語では避けた方が安全
shipment / shipping と相性の良い動詞(一覧表)
shipment は「出荷行為(点)」、shipping は文脈で意味が広がりますが、この表では shipping を「船積み行為(点)」として扱っています。どちらも動詞との組み合わせはほぼ共通で、make の可否だけが異なります。
| 表現 | 対象 | 意味・ニュアンス |
|---|---|---|
| arrange the shipment | shipment(出荷行為=点) | 出荷を手配する |
| arrange the shipping | shipping(ここでは船積み行為=点として扱う) | 船積みを手配する |
| carry out the shipment | shipment(点) | 出荷を行う(ややフォーマル) |
| carry out the shipping | shipping(点) | 船積みを行う(ややフォーマル) |
| conduct the shipment | shipment(点) | 出荷業務を遂行する(フォーマル) |
| conduct the shipping | shipping(点) | 船積み業務を遂行する(フォーマル) |
| make the shipment | shipment(点) | 出荷する(あまり使われない) |
| make the shipping | ❌ | 不可(使わない) |
貿易実務で使える英語表現(shipment / shipping)
貨物そのもの(shipment)
- The shipment was damaged during transportation.
輸送中に貨物が破損しました。
【ポイント】
・shipment=貨物そのもの(モノ) - The shipment has arrived at our warehouse.
その貨物は当社倉庫に到着しました。
【ポイント】
・shipment=貨物そのもの(モノ)
出荷の単位(shipment)
- We received three shipments from the supplier this month.
今月、サプライヤーから3件の出荷を受け取りました。
【ポイント】
・shipment=出荷の件数(数えられる) - We handled five shipments for this customer last month.
先月、このお客様向けに5件の出荷を取り扱いました。
【ポイント】
・shipment=出荷の件数(数えられる)
出荷行為(shipment)
- The shipment was completed last Friday.
先週の金曜日に出荷が完了しました。
【ポイント】
・shipment が出荷行為(点)として使われている
※契約書・L/C の文脈では shipment が「船積み(積込み完了)」を指す特有の用法がありますが、日々のメールや実務上のやり取りでは shipment は「出荷行為(点)」として使われるのが一般的です。
出荷日(shipment)
- We would like to update your shipment schedule. Your order is scheduled to ship this Friday.
出荷スケジュールを更新いたします。今週の金曜日に出荷予定です。
【ポイント】
・shipment schedule=出荷予定日 - We’d appreciate it if you could update the shipment schedule at your factory every week for the upcoming orders.
【ポイント】
・shipment schedule=複数の出荷(点)の集合としてのスケジュール - Could you please confirm the shipment date for our October order?
10月の注文分の出荷日をご確認いただけますか?
【ポイント】
・shipment date=出荷日
出荷準備〜船積みまでの工程全体(shippping)
- Our team is currently coordinating the entire shipping process for your order.
現在、御社ご注文分の出荷準備から船積みまでの一連の工程を調整しています。
【ポイント】
・entire shipping process → 工程全体(線) - The shipping operations for this project will take approximately two weeks.
本案件の出荷〜船積みまでの業務全体には約2週間かかる予定です。
【ポイント】
・shipping operations → 出荷・船積み業務全体(線)
物流・輸送関連費用(shipping)
- Please note that shipping costs have increased due to the rise in fuel prices.
燃料費の上昇により、物流・輸送関連費用が増加しておりますのでご了承ください。
【ポイント】
・「shipping cost」は出荷・船積み・輸送工程をまとめた費用表現
・含まれる範囲はインコタームズや契約条件によって変わる
・EXW条件:工場出荷周辺の費用(点)
・CIF条件:工場〜到着港までの費用(線)
- 「shipping cost」は文脈によって「送料」と訳すこともあります(詳細は下のセクション参照)。
送料(shipping)
サンプル発送では、DAP や DDP 条件での配送が多く、少量貨物やサンプル品はクーリエ便を使うことが一般的です。個人取引の感覚にも近いこともあり、shipping cost や shipping charge はどちらも「送料」と訳すのが自然です。
ただし、立場によって使う単語が異なります。
| 英語表現 | 意味 |
|---|---|
| shipping cost | 輸出者(売り手)が運送会社に支払う実費(=原価) |
| shipping charge | 輸入者(買い手)が請求されて支払う金額 |
- Our company will bear the shipping cost for this sample.
当社がサンプルの送料を負担します。
【ポイント】
・shipping cost=輸出者が運送会社に払う実費 - Would the shipping charge be free for this sample?
このサンプルの送料は無料になりますでしょうか?
【ポイント】
・shipping charge=輸入者が請求される金額
船積依頼書(Shipping)
- We have just sent the shipping instructions for your shipment to the forwarder.
貴社の貨物について、船積み指示(SI)をフォワーダーへ提出しました。
【ポイント】
・Shipping Instructions(船積依頼書)はB/L作成に必要な情報をまとめた指示書
・日本語では「船積依頼書」と単数で呼ばれるため Shipping Instruction(単数) と説明されることもあるが、実務英語では、shipper / consignee / notify / vessel / cargo details など、複数の情報項目をまとめた書類であるため、Shipping Instructions(複数形)が一般的
・特定の船積み(1回の船積み=点)を成立させるための書類 - Shipping instructions have been submitted to the carrier.
船社への船積み指示(SI)は提出済みです。
【ポイント】
・受動態により、提出という事実そのものに焦点
・海外拠点からの簡潔な報告表現としてよく使われる
・SI は shipping operations(業務全体=線)ではなく、shipping(点)に紐づく書類
船積み手配(shipping)
- We are arranging the shipping at Kobe port now.
現在、神戸港での船積み手配を行っています。
【ポイント】
・shipping は文脈で「点」にも「線」にもなる語。
・この文では、
・「船積み作業そのもの(点)」
・または「船積みに向けた一連の手配(短い線)」のどちらにも解釈できる。
・積み込み作業そのものを明確に言いたい場合は “vessel loading” が最適。
船積み書類(shipping)
- Please provide us with the shipping documents (including B/L, Invoice, Packing List, etc.).
B/L(船荷証券)、インボイス、パッキングリスト等を含む、船積み書類をご提供ください。
【ポイント】
・shipping documents=船積み書類(点)。国際物流では出荷書類ではなく、船積みに必要な書類を指すのが一般的です。
船積み業務全体 (shipping)
- Our team will oversee the shipping operations, including container booking, export clearance, and vessel coordination
コンテナ手配・輸出通関・船との調整など、船積み業務全体を弊社チームが管理します。
【ポイント】
・shipping operations=船積みに関わる業務全体(=本ブログでいう「船積みに関わる工程」/線)
・shipping operations は文脈依存で、後続語によって「出荷〜船積み全体」、「船積み業務のみ」のどちらにもなり得るが、この例では後続語(container booking / export clearance / vessel coordination) により 船積みに限定されます。
・この文脈では工場での出荷作業は含まれません。
まとめ
- shipment:日常の実務では、貨物そのもの・出荷単位・出荷行為といった「点」を表す語
- shipping:基本は「送る(点)」だが、貿易実務では “船積み行為(点)” を指すことが多く、文脈によっては工程全体として「線」に拡張される
この違いを押さえておくと、英文メールや書類作成での誤解が減り、より正確で伝わりやすい英語表現ができるようになります。
※契約書・L/C では shipment が「船積み(積込み完了)」を指す特有の用法がありますが、これは例外的な契約文脈であり、日常の実務コミュニケーションでは shipment=出荷(点)、shipping=船積み(点)として使われます。

