こんにちは。今回は、貿易実務検定A級の「英語科目」(正式には「貿易実務英語」)に焦点をあて、過去試験の傾向を踏まえた効率的な勉強法と攻略ポイントをまとめました。
A級の英文レベル自体は、B級と同程度〜やや難しめです。ただし、穴埋め問題や英作文などアウトプット力も問われるため、より広い範囲の英語力が求められます。
一方で、短期間で得点を伸ばしやすい分野がはっきりしているのもA級英語の特徴です。特に、法律用語・インコタームズ・大きな数字の扱いは、知識として覚えるだけで正誤判断ができる問題が多く、得点源になりやすいポイントです。
この記事では、過去6回分(第18回〜第23回)の出題傾向をもとに、英語科目で効率よく得点するための考え方と、問題別の攻略ポイントを整理しました。
はじめて貿易実務検定A級を受験する方へ
A級全体の試験構成や勉強法は、以下の記事で詳しく解説しています。こちらから読むと、本記事の内容が理解しやすくなります。
英語科目のポイント
A級英語で短期間に得点を伸ばすために、特に意識したいのは次の3点です。
① 契約書・保険に関する法律用語
英文契約書には次のような独特な言い回しや語彙が多く登場します。最初は戸惑いやすいですが、実際に出題される重要語句は限られています。
- subject to:~を条件として
- liability:法的な責任
- assume:(債務などを)負担する
- title:所有権
次のような誤訳も出題されることがあります。実用新案権 = utility modelと言うことを知っていれば、三答択一問題ではすぐに選択肢の一つを消去できます。
- 実用新案権 (知的財産に関する法律用語)
正解:utility model
誤訳:utility
② インコタームズの正確な名称
インコタームズは、名称の誤訳を問う問題がほぼ毎回出題されます。丸暗記になりますが、その分、確実に点につながります。
- CIP
正解:輸送費保険料込み
誤訳:運賃保険料込み - DPU
正解:荷卸込持込渡し
誤訳:関税込持込渡しや持込渡し
③ 大きな数字の感覚
普段の実務ではあまり扱わない億・兆単位の金額が出題されます。英語表現と日本語の金額感覚が一致していれば、数字を見るだけで三答択一問題での誤答を除外できることもあります。
- 200 billion yen:
正解:2千億円
誤訳:200億円 - $3.7 billion
正解:37億ドル
誤訳:3億7千ドルや370億ドル
これら3つのテーマについては、今後それぞれ別記事で詳しく解説する予定です。
過去問を解くメリット
過去問を解くことで、繰り返し出題される語彙・論点・パターンが自然と見えてきます。特に、法律用語・インコタームズ・数字表現は、過去問演習を通して覚えるのが最も効率的です。
私は5年分の過去問を解き、分からない語彙を単語リストにして覚えていました。最低でも3年分は解いておくことをおすすめします。出題傾向の把握や時間配分の練習に役立ちます。
問題1 (英文解釈)& 問題2 (和文英訳)
引合い、条件交渉、契約書、クレーム対応、貿易統計など、実務でよく目にする英文が出題されます。インコタームズや大きな数字が含まれる問題では、全文を丁寧に読む前に、まず単語レベルでの誤訳がないかを先に確認するのがおすすめです。これだけでも、かなり時間を節約できます。
問題3(主要用語)
信用状統一規則、ウィーン売買条約、貨物海上保険、インコタームズなどの条文の一部が空欄になり、適切な語句を選ぶ問題です。インコタームズについては、英語の説明文を読んで該当する規則を選ばせる問題も出題されます。過去問で英語での定義に慣れておくことが重要です。
問題4(長文読解)
他の問題と比べ比較的読みやすい英文が多く、文章の流れに沿って問題が並びます。少しずつ読み進めながら解答していくと時間を有効に使えます。
ただし、視点の切り替えが必要な問題や、金額の計算が絡む問題が出題されることがあるため、落ち着いて読むことが大切です。
例題 (改編):
「A国の日本からの輸入額を米ドル換算した場合、最も近いものは次のどれか。日本円の現在の対米ドル外国為替相場を150円とする。」
参考文 (改編):
“Japan exported about 591.30 billion yen worth of products to A country and imported goods worth 347.8 billion yen.“
① 視点を確認する
「A国の日本からの輸入額」=日本の「輸出額」
→ 該当するのは 591.30 billion yen(5,913億円)
② 円からドルに換算する
為替レート:1ドル=150円
→ 5,913億円 ÷ 150 = 約39.42億ドル
計算問題の注意点
- 視点を間違えない
「輸出」「輸入」のどちらのデータを使うかを正しく判断する。
日本の「輸出」=相手国の「輸入」。 - 単位の意識
「億」「十億」の単位を意識しておくと、選択肢の見極めがスムーズになる。
桁数を整理しながら考える習慣をつけると、計算ミスも防ぎやすい。
(例:5,913億円 → 591.3 billion yen) - 為替レートの適用方法
円→ドルは「割り算」(円 ÷ 為替レート)
ドル→円は「掛け算」(ドル × 為替レート)
| テーマ | 出題回数 |
|---|---|
| 世界銀行が発表した世界経済の見通しの記事 | 1 |
| インコタームズの前書き | 1 |
| 中国の規制緩和に関する記事 | 1 |
| 日米首脳会談後の共同声明に関する記事 | 1 |
| 信用状統一規則の前書き | 1 |
| 日本とインドの経済連携協定に関する記事 | 1 |
問題5(書類の読み取り)
契約書類の出題が4回と多いです。契約書の内容は、秘密保持条項について、契約解除条項について、義務に関して、製造物責任についてが出題されています。法律用語に慣れてくると、文章全体の理解がかなり楽になります。
| テーマ | 出題回数 |
|---|---|
| 契約書 | 4 |
| 旧ICCのWA Clause | 1 |
| 船荷証券の約款 | 1 |
問題6(英作文)
最も配点が高い(30点)問題です。出題は主に以下の2パターンです。かなり硬いフォーマルな日本語の文章が出題され、それを英語に翻訳します。
- 交渉メール (運賃・返金・契約条件など)
- お詫びメール(製品不具合・誤出荷など)
英作文で30点満点を取るのは至難の業だと思います。満点を目指しながら勉強しつつも、結果的に70%程取れれば十分だと思います。
なお、普段から英文メールでよく使うフレーズをストックしておくと、試験でも役立ちます。例えば、お詫びの場合には「I apologize for any inconvenience this may have caused.」といった定番の表現があります。こうしたフレーズを覚えておくことで、様々な場面に対応できるようになります。
私のブログでも貿易実務者向けの英語フレーズを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
| テーマ | 出題回数 |
|---|---|
| 交渉 | 4 |
| お詫び | 2 |
最後に
今回は、貿易実務検定A級・英語科目の攻略ポイントを整理しました。過去問を通して出題パターンに慣れ、法律用語・インコタームズ・数字表現を重点的に対策することが、合格を目指す上で効率的な対策です。
