通関士試験の勉強を始めた頃、「独学でも合格できるのだろうか」と考えていましたが、結果として独学で初回合格することができました。
ただ、試験後は自己採点をしても安心できず、合格発表の日までは「本当に受かったのだろうか」と何度も気になっていました。
この記事では、勉強法の解説というよりも、勉強時間や模試の使い方、試験当日の様子など、実際に受験して感じたことを中心にまとめています。
難易度
通関士試験は、貿易・通関分野を代表する難関資格の一つです。近年の合格率は10%台前半で推移しており、2025年試験の合格率は約15%(合格者数約950名)、2024年試験は約12%(合格者数約760名)でした。
会場試験の独特の緊張感、そして年1回しか受験できない点も、体感難易度を押し上げていると感じました。
個人的な感想としては、
「独学でも十分合格を狙える試験。ただし簡単ではない」
というのが率直な印象です。
実際、勉強を続けていると「いけそうかな」と感じる時期もありますが、本番が近づくにつれて不安になる場面も多くありました。
最大の難所は通関実務 (3科目目)
通関業務未経験の私にとって、最大の山場は3科目目の通関実務(正式名称:通関書類の作成要領及びその他通関手続きの実務)でした。
通関業法や関税法等は、過去問とテキストを繰り返すことで徐々に得点が安定していく、いわば暗記中心の科目です。
一方、通関実務の通関書類の作成(第1問と第2問の輸出申告・輸入申告)問題では、出題範囲が広く、どの分野が出るかを完全に予測するのは難しい科目です。すべての商品のHSコードを個別に覚えるのは不可能のため、実行関税率表の読み方をしっかり身につけることが重要だと感じました。本番では19点/20点でした。
また、計算式(第8問~第11問の関税額の計算、課税価格の計算など)では様々な可算要素、不可算要素を正確に覚える必要があり、ハードルが高かったのですが、テキスト、過去問、模試の復習を繰り返した結果、本番では8点/10点でした。
関税法等 (2科目目)
関税法等(正式名称:関税法、関税定率法その他関税に関する法律および外国為替及び外国貿易法)では広範囲にわたる法律知識が問われます。
特に関税の法定納期限や納期限など、例外規定が多い分野です。課税物件確定の時期や適用法令についても細かな例外があり、正確な理解が求められます。
原則を押さえたうえで、例外を整理することが大切です。これらを一通り覚えて、ようやく本番の土台に立てる印象でした。
私は単語帳を作り、寝る前にざっと見返す習慣をつけました。毎日少しでも触れることで、記憶の定着につながったと思います。
通関業法 (1科目目)
通関業法は範囲が狭く、繰り返し出題される論点が多い科目です。過去問と模試を繰り返すことで、短期間でも高得点を狙える分野だと感じました。
模試の使い方
複数社の模試を受験
私は偏りを避けるため、3社で合計5回模試を受験しました。
- 予想問題の傾向
- 講師の解説の深さ
- 問題のクセ
主催者ごとに特徴があり、同じような問題でも違う角度から解説しているケースもあり、理解が深まりました。
結果は
- 不合格:3回
- 合格:2回
不合格判定が出たときは、「本番まであと1か月しかないのに大丈夫だろうか」と正直かなり不安になりました。ただ、模試はあくまで練習です。間違えた箇所を徹底的に見直し、次に同じような問題が出たら確実に取れるように復習を重ねました。
会場模試
本番に近い緊張感があり、時間配分の練習として非常に役立ちました。会場模試では他の受験生の動きも気になるので独特のプレッシャーを感じました。
自宅模試
好きな時間に、好きな場所で受験できるのが自宅模試のメリットです。
試験会場が遠い方や、仕事などで会場模試に参加する時間を確保しにくい方にとっては、利用価値が高いと思います。
また、通関実務は文章だけの解説では理解が難しい場合もあります。そのため、動画解説付きの模試がおすすめです。実際に解説を視聴してみると、「なぜその答えになるのか」が視覚的に理解でき、学習効率が大きく変わると感じました。
試験当日の感想
試験会場は大学の講義室で、3人掛けの長机の両端に1人ずつ座り、中央は空席となる形式でした。試験官は2名。受験者は30名ほど。
私は1人で受験しましたが、職場の知り合い同士で受験している方もいました。休憩中には試験内容について話している声も聞こえました。
午前:通関業法 → 関税法等
午後:通関実務
休憩中は外に出てストレッチをしたり、昼食は天気が良かったのでベンチでお弁当を食べたりと、意識的にリラックスするようにしました。
試験が始まると、周囲から次々とページをめくる音が聞こえてきます。
「みんな解くの早いな…」
と少し焦りましたが、自分のペースを崩さないよう意識しました。
今振り返ると、周囲のペースはどうしても気になってしまうものです。ただ、他の受験者と競争しているわけではありません。大学受験のように定員が決まっているわけではなく、基準点を超えれば合格できる試験です。
これまで積み重ねてきた学習を信じて、自分の解答に集中することが大切だと感じました。
結果速報の話
速報は必ずしも正確とは限りません。
実際、最初に見た速報では通関実務が40%台で「不合格か…」と落ち込みましたが、別の速報では70%以上でした。
通関士試験は、予備校間で解答が割れることもあるほど難しい試験です。自己採点をする際は、複数社の解答速報を確認することをおすすめします。
勉強時間
通関業務未経験の私は、毎日2〜3時間の学習を約10カ月続けて初回合格しました。
自己採点は以下の通りです。
- 通関業法 (1科目目):90%
- 関税法等 (2科目目):75%
- 通関実務 (3科目目):75%
※使用テキストの発売時期に合わせて勉強を開始したため、結果的に約10カ月になりました。
貿易実務検定A級との違い
両方受験した経験から、違いを簡単にまとめると以下の通りです。
どちらも高いレベルの知識と実務理解が求められる難関資格です。ただ、貿易実務検定A級と比べると、通関士試験は複数選択式問題や各科目の足切り制度もあるため、個人的には受験者をふるいにかける要素がより強い試験という印象を受けました。
| 項目 | A級 | 通関士 |
|---|---|---|
| 出題範囲 | 貿易実務全般 | 法令中心(関税法・関税定率法・通関業法など) |
| 英語 | あり | ほぼなし(インボイスは英語表記) |
| マーケティング | あり | なし |
| 計算 | あり | 多い |
| 試験の位置付け | 貿易実務の総合型 | 国家資格 |
| 回答 | マークシート式、記述式 | マークシート式(選択式に加え、計算結果を自分で記入する問題も出題される) |
| マークシートの特徴 | 択一式 | 複数選択式あり (全ての回答が正しい場合のみ、加点される) |
| 合格ライン | 合計点の約60%予想(各教科の足切りなし) | 各教科60% |
| 試験の印象 | 幅広い知識と実務力を問う試験。学習した内容が比較的素直に出題される。 | 法令・通関実務を深く問う試験。複数選択式問題や各科目の足切りがあり、受験者をふるいにかける要素が強い。 |
実際に使った教材
まずは 通関士 完全攻略ガイド で全体像を把握しました。申告書作成の経験がなかったため、ゼロからの申告書 も併用しました。
- 通関士 完全攻略ガイド(翔泳社)
→ 最初の全体像把握に最適 - 通関士 過去問題集(翔泳社)
→ 本番レベルの感覚をつかむために必須 - ゼロからの申告書(日本関税協会)
→ 実務未経験者の申告書対策に役立つ - 通関士合格の基礎知識(日本能率協会マネジメントセンター)
→基礎の基礎から解説があるので未経験者にとってはありがたい一冊
最後に
私自身、勉強を始めた頃は「本当に独学で受かるのだろうか」と不安でした。それでも少しずつ勉強を積み重ねた結果、初回で合格することができました。この記事が、これから通関士試験に挑戦する方の参考になれば嬉しく思います。
